よもつひらさか かへりて候

知人と会いに行くとでかけた姉がもう三日も帰ってきません。失踪か事件に巻き込まれたか…と心配していたら、昨日電話が来ました。「今ね、ヒラサカ。もうすぐネノクニ。会いたい人とちょっと話したらすぐ帰るからお塩用意しておいてね」とのこと。塩…?

https://twitter.com/1day1nonsense/status/1617512231935283201

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心配性の妹はしきりに案じている。電話越し、ブツブツとした雑音混じりに妹が声を上げた。

『本当に?本当に大丈夫?……塩???』

クスリと笑って通話を切る。
それから私は背後にいる人と短いやりとりを交わし、深く息を吐いた。よしよし、気が済んだ。
さあ、帰ろう。
私は荷物を確かめて、エイヤと立ち上がった。白いブラウスから常磐色の長袖Tシャツに着替え、ボロボロになったベージュの綿パンをパタパタはたく。ああ、ほこりっぽいなあ。
膝を擦りむいていた。にじむ血は赤い。ジリジリ痛むはずのそれは全くの無痛だ。
早く痛みが戻る場所まで帰らなきゃ! 私はバッグを肩にかけ直し、走り出した。背後では先月亡くなった知人が手を振っている。

ー サヨナラ、またいつか!

そうだね、またいつか! やっぱり会いに来てよかった。今度こそ、お別れは笑顔で。
貴女はただの知人でした。だからこそ、生前お見舞いには行ってない。だってそこまで親しくないもん。
もし貴女が私の大事な妹のパートナーだと知っていたなら、きっと生きてる間に別れの挨拶をしに行ったのに。どうしてもっと早くに教えてくれなかったの。もう! 二人とも!
髪止めはブドウの蔓。バッグには桃味のグミとたけ●この里、竹製の箸を一袋。
日本古代史専攻をなめないでよね。いざ、黄泉路帰り!

帰宅したら、泣いてベショベショの妹がおもいきり塩をまいてきた。豆まきみたいに! しょっぱ! 顔はやめて! ちょ…!


……た、ただいま。




おしまい


変換中に百合の花が咲いたので、いいわねと思って百合話にした。姉はチートキャラ。

デタラメのつづき
デタラメのつづき

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