あめふり祭

「あめふらせー、あめふらせ」と歌いながら近所の子どもたちが走っていく。今日は子どもにも賭け事が許される伝統的なお祭りだ。子ども博打はさいころ模様の四角い飴で丁半を振る。
「あめふらせ」は雨を乞う田畑のための祈りと飴を触らせろという掛け声が合体したものだと言う。

https://twitter.com/1day1nonsense/status/1142648224181735425

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濡れ縁に腰掛けぶらぶらと足を揺らす。


僕だけはお祭に行けない。カラコロと歯に当たるサイの飴がうらめしかった。
サイコロのサイは、賽の河原のサイとおんなじ字なんだって。サイの飴を食めば万が一にも安心だって。賽の河原に落ちたって、石を積まずにサイコロ振って遊んでいられるってさ。

今年のお正月、僕は夢を見た。ニタニタ笑う大きな生き物が寝ている僕の顔をずいぃっと覗き込む夢だった。

今年、七つの内を出たらしい。
昔の数えかたでは、一歳年上になるんだって。
だから僕はもう、八つなんだってさ。
万が一の飴をカラコロ舐めながら、家の周りをぐるりと囲むしめ縄にギュウと怖い顔して見せる。祭りに向かう誰かの声がまた聞こえた。
視線をあげると、屋根より高い夜空の中にあの日の夢の顔が浮かんでいる。暗いから顔しか見えないけど。体が黒くて、でも顔面は稲わらみたいな明るい色だから顔だけが見えるんだ。
そいつは困った表情で焦っているみたい。ぐるぐる顔を動かして中に入りたいようだけど、どうしてもできないみたいだ。もう泣きそうに見える。
ばーかばーか、ばーか。お前のせいで最低。学校もリモート、遊びにも行けない。初夢を見た日から、今年のお祭が終わるまでしめ縄の外に出てはダメだって。

あめふらせ、あめふらせ。

つぶやきながらサイの飴を食む。『ねんきあけ』までもう少し。きっと、今年も、賭けは僕らの勝ちなのだ。

選ばれた今年、僕は祭に出られない。

おしまい。

デタラメのつづき
デタラメのつづき

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