マノリコ暦の追憶
シハという国のマノリコ暦では、一年は3781日。 #1日1デタラメ
https://twitter.com/1day1nonsense/status/1420358350009552896
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『ということは、我々からするとほぼ10年ということだ、彼らの1年はね。
10歳で1歳、ハタチになってやっと2歳だな』
そう言って、お髭の先生は何だか楽しそうに笑っていらっしゃいました。大学の講義はたいていが退屈でしたけれど、わたくし、この先生のお話はいつも好きでしたの。
…女性はそこで言葉を切り、香り高い紅茶を一口含んだ。
ガブリエル シャネルが香りそうな仕草だ。さらさらとした紗々の肌をレースのように皺が飾る。
朝の光に透ける白髪の透明な輝き。微かに乳白を帯びた瞳は優雅に潤む。
「ところで、貴方は今おいくつなの? あんまり話が合うものだから、おばあちゃま、びっくりしちゃったわ。
だって、ねえ?こんなにお若い、孫より小さいお子さんと、思い出話をするだなんて!」
自らを御婆様と呼び、女性は可笑しそうにホホホと口元を押さえて笑う。
ああ、では僕はなんと答えるべきだろう。正直に?それとも。
「……確か、12歳、だったかな」
僕は肩をすくめた。
数十年前の女学生よ。どうか気づいて。いや、気づいてくれるな。
君と会うのは、あのマノリコ歴の講義以来だね。
おしまい。
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年の頃12、3に見える少年と、上品かつ華やかな老婦人の会話。
坊やは数十年前、どんな外見だったのでしょうね。